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「最強の記憶術」
smart.fmのいま セレゴ・ジャパン誕生秘話 smart.fmの未来像
smart.fmのいま
増え続けるユーザー数
出口  アンドリューとエリックは、smart.fm運営会社「セレゴ・ジャパン」を作り育てた二人、ということでよろしいんですよね。
2人  はい。
出口  このSmart.fmという新しい英語学習サイトの特徴的なポイントはどんなところですか?ウェブサービスでもあり、学習サービスでもありというところですが、位置づけとしてはどのようになるのでしょうか。
Eric  ウェブサービスというより、プラットフォーム展開をしている学習サービスですね。そして、セレゴ・ジャパンについて一言で言うのであれば、ラーニング・テクノロジー会社です。
 「人が学習するメカニズムを脳科学・認知心理学の見地から解明し、学習効率を飛躍的に高める」ことをミッションに、2000年に設立しました。創立以来、いかにすれば短期間で何かを覚え、その記憶を長期間に渡って維持できるかというテーマに基づき、脳科学・認知心理学の分野において研究を重ねてきました。
 その結果、科学的根拠に基づいた学習方法論を体系化し、「アダプティブ・ラーニング・ソリューション」を確立しました。Smart.fmは、セレゴのアダプティブ・ラーニング・ソリューションを駆使した学習サイトで、現在、一般の皆様から企業、教育機関の皆様にご利用いただいています。
出口  アダプティブ・ラーニング・ソリューションとは、具体的に言うとどういうことを提供するものなのですか?
Eric  まずは、リッチなマルチメディアを使った「学習コンテンツ」、一人ひとりの習熟度や学び癖をモニターし、最適な学習スケジュールを提供する「学習エンジン」、洗練されたデザイン、かつ操作性の高い「学習アプリケーション」、そして、拡張性高く、多様性ある「プラットフォーム」を活用したサービスです。
出口  様々な要素で構成されているのですね。
 smart.fmを始めたのはいつ頃からでしょうか?
Eric  2007年の10月です。
出口  もう2年半になるんですね。学習サービスということで、ユーザーの学習傾向についてお話いただけますか?  
Eric  Smart.fmに蓄積されている、ユーザーの学習データを分析したところ、ざっくりと速いペース、標準的ペース、そしてゆっくりペースで学習するグループに分類することが出来ました。標準的なペースで学習する場合、1日20分の学習で、合計約18時間もしくは、約2ヶ月で1000アイテムを学習することになります。1000アイテムというと、中学校3年間の義務教育の中で必須でマスターしなければならない900語彙に相当します。
  何かを学び、忘れるのは、脳の仕組み上当たり前のことです。でも、そのプロセスを生かせば、効率的かつ効果的な学習が実現するのです。
出口  最近、相当増えたわけですよね。
Eric  増えましたね。おかげさまで、iTunesのpodcastを出した最初の月に、25万人の新規ユーザーが突然現れてきました。今はだいたい、月々30万から35万人ぐらいの新規登録者がいます。
出口  ユーザーが利用するプラットフォームはパソコンがメインですか?
Eric  今はやはり英語学習も、いつでもどこでも出来ないと消費者に満足してもらえない時代ではないでしょうか。なので、パソコンだけではなく、iPhone やiPod touch向けのアプリやポッドキャストを提供し、サービスの充実を図っています。  
出口  サイトの成長というところでの指標を聞かせてください。
Eric  難しい質問ですね。日本市場では英語学習を軸にテコ入れをするタイミングですし、海外のマーケットも視野に入れています。成長の指標というのであれば、より多くのユーザーにSmart.fmを利用していただき、継続的に学習が出来る環境をどこまで築き上げていけるかということでしょうか。  
出口  今Smart.fmは、パソコン上で学習できるわけですが、それに加えて、iPhone等を使った有料コンテンツも提供しているという状況ですね。
脳科学から生まれた最高のテクノロジー
出口  先ほどのお話からもわかるように、Smart.fmの記憶システムには、かなり脳科学のテクノロジーが入っていると伺っています。お二人の本『最強の記憶術』(日経BP社)によると、一回単語を学習した後、次にどのタイミングで何回繰り返せば本当にものになるのかは、単語ごと、ユーザーの状況ごとに違ってくる。それをコンピュータが瞬時に計算し、ユーザーにとって最適な時に復習アイテムを出題してくれる、とありました。
 この根幹のテクノロジーには驚きましたね。使っている時は決して見えないそのテクノロジーのおかげで、自然に単語を覚えられるようになっている。このようなテクノロジーは今、世界のどこにもないわけですよね。
Eric  

そうですね、「忘却曲線云々」を謳う会社はいくらでもありますが、我々のようにユーザー一人ひとりが勉強している単語やフレーズごとに記憶定着率を管理し、「このユーザーにはこのアイテムを見せるべき、このユーザーにはあのアイテムを見せる必要はない」と判断したり、忘却曲線をはかりつつ、覚えるスピードと忘れていくスピードを細かいところまで計算できるのは、今のところはセレゴが提供する「アダプティブ・ラーニング・ソリューション」しかないと思います。

出口  「忘却曲線を利用」とは、要は脳は覚えても時間とともに忘れていくのだから、タイミングを計って復習を繰り返すことにより、記憶が維持できるということですね。

これはかなり昔から言われていることであって、それに基づいた学習法も多くあります。しかし、単語毎に、ユーザー各人の学び癖に応じて、瞬時にコンピュータが記憶強度を判断してくれるシステムは、今までありませんでしたね。
Eric  メカニズム自体は簡単です。通常、「この単語を覚えたい」と思ったら、見て、頭にインプットすることを繰り返し行いますよね。その際、そのアイテムを繰り返し復習すべきかについて、自己判断しなくてはならないわけですが、人間って自己判断することは得意ではないんです。特に大量な情報に対する判断においては正確性に欠けることも否めません。そういう時こそコンピュータの出番なのです。
 セレゴが提供する学習エンジンは、コンピュータがルールに基づいて、アイテムごとの記憶強度を計算し、人間が忘れる度合いを予想します。当然、時間が経つとともに、予想された記憶強度は下がっていきますよね。それがある一定のラインを下回った時に、もう一度復習させるための出題をします。
 その時のユーザーの反応によって、コンピュータが予想した記憶強度よりユーザーの記憶強度が高いか低いか判断できます。当然、個人差がありますから、予想と必ずブレが出てくるのです。そのブレを利用して、システムにそのデータを織り込むことにより、次回の予想がより正確になります。アイテムの一つ一つについて、それを繰り返すのです。
 計算、記録、予想――これらは人間にとって、とても難しいことです。だけど、コンピュータにとっては容易いことです。大量な計算を瞬時に、且つ、正確に行えるのはやはりコンピュータだからであって、人間の脳ではどうしても限界があります。
 単純に言えば、このシステムは我々の脳で自然に起きている記憶のプロセスをシステマティックに分析し、最適なスケジュールを提示することで、高い学習効果を実現しているということです。  
出口  おっしゃる通り、計算、記録、予想について、人間はコンピュータに絶対勝てません。ならば、コンピュータを利用して、その先のいろいろな発想をすることや、物を考えることに人間は専念した方が、学習効率はより良くなるはずですよね。