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『国際バカロレアを知るために』出版記念シンポジウム 第2部

質疑応答1:大迫弘和氏へ質問



今年の秋、慶應大学が初めてIB入試を法学部で先行しましたが、その結果、法学部の法律学科は応募者0人、政治学科は1次審査合格なし。慶應大学初のIB入試のこの結果について、お考え等をお聞かせいただけますか。


大迫

今、200校プロジェクトのための色々な制度設計を進めている真っ最中です。来年の4月に高校1年生になる生徒たちが このプロジェクトの1期生になりますので、そのために今、彼らが才能を開花できる場所というのを次第に作っているという状態です。慶應大学法学部のみならず、他にも今まで岡山大学など色々なところで開いていて、まだほとんど受験生は出てないということですから、それは特に心配する状況ではないというふうに思います。



質疑応答2:鈴木寛氏へ質問


神奈川県の学習塾から来ています。今年初めて、カリフォルニア大学に子供たちを10人連れていき、中学生にディスカッションとプレゼンテーションをしてもらう企画を実現しました。教育を少しずつ変えていこうという動きが社内にありますが、保護者の方たちから、「今、子供たちに伝えることって何ですか」「保護者がやることって何ですか」という不安をすごく聞きます。そういう不安を持つ保護者の方、子供たちに今伝えられることは何でしょうか。
 もう一つお伺いしたいのが、教育が変わっている今、新しい教育を受けた子供たちが社会に出たとき、その子供たちを指導するのは、そのような教育を受けていない大人たち。そうなったとき、子供たちが潰されないかという不安を保護者の方は感じています。何を伝えるべきしょうか。


鈴木寛

まず保護者の皆さんにお伝えいただきたいのは、早稲田・慶應といった大学では、内定を取りまくる学生と、まったく取れない学生の二分化が起こっているということです。
 まさに先ほど言ったIB的、21世紀的なものを身につけている学生は、内定を取りまくるし、もちろん自ら起業もするし、社会で活躍する場を自ら作りだしたり、あるいはそれをつかみ取ったりすることができます。でも早稲田や慶應、いわんや東大に入っても、単なる情報処理力があるだけの指示待ち人間は、職を得られない。国立大学・早慶といった名門校にさえ入れば何とかなるというのは幻想です。
 先ほど寺脇さんもおっしゃったけれども、例えば電通という会社がありますね。賛否両論はあると思うんだけど、電通の人事はなかなかしっかりしているなと思うのは、いわゆる世の中的に言う偏差値では「え、こんな学校が」という学生でも、プロジェクトを作りだす能力、色々なものをリスクテイクする能力とかがある学生は入るんですね。一方で、東大法学部でも落ちる人はいっぱいいます。企業の人事は日々勝負しているので。もちろん企業も、「大丈夫かな」という人事もあります。だけど、そういうところに入ったところで、その会社は潰れますから。本当の人を見抜く力がないと潰れる、それが現実だということですね。
 それからさっき、高校と大学と企業・実業界の人たちとの熟議が必要だと申し上げたんですが、企業や実業界が欲する人材について、高校の進路指導や校長先生、保護者は残念ながら知る機会がなかなかありません。入試の傾向と対策はものすごくやるんだけれども、その先の傾向と対策については手が回らないということなので、高校・大学一貫して、実業界で働ける人材はどういう人材なのかということを、大学が仲立ちする形で直接対話してほしい。だから、ものすごく不幸なのは、東大に入りました、しかし、就職一つももらえませんでしたということ。「そういうお子さんを育てたいんですか」ということを、ぜひお伝えいただければありがたいなと思います。



鈴木と

お時間となりました。先生方のお話を伺って、教育を通して日本社会全体が自信と夢を取り戻す、そんな時代を迎えたいと、強く感じました。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。