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話し方の基本の基本3

2011.05.18

自分の世界の中で生きていた

 私は「話し方」のプロです。
 もちろん、「話し方」がうまいからプロなのではなく、長時間しゃべり続ける職業に従事してきたという意味で、私は間違いなくプロです。
 予備校講師の売り出しのころ、一日九十分の講義を四回から、五回、マイクを持って四、五百人の生徒に向かって喋り続けます。
 一日6?8時間程度、休み時間の質問の受付時間を入れたなら、もっと多く喋り続けたのです。

 私はどうやら子供のころからおしゃべりだったらしいです。
 でも、決して「話し方」がうまいわけではありませんでした。
 私は感覚人間でした。
 他者意識も社会性も全くなかったのです。
 高校生になっても、他人にはまったく関心がありませんでした。
 ひたすら自分の世界の中で、妄想ばかりふけっていました。世界は自分が目を開けているときだけ存在し、実は目をつぶっているときには世界は消滅しているのかも知れない、そう思うこともたびたびでした。
 もちろん、いつでもそんなことを信じていたわけではありません。でも、自分は世界の中心だったのです。
 これは威張っているとか、選民思想を抱いているとかいうのではなく、他者意識が極端になかったのだと思います。
 自分が喋りたいことを喋りたいだけ話し、相手がそれを理解したかどうかなどまったく関心がなかったのです。まさに自分の体内に生まれてくる言葉を、時々外に吐き出したといった具合です。

 大勢の前で話すことはもっとも苦手でした。
 少人数なら、相手かまわず好きなことを述べていればいいのですが、大勢に向かって話すときは、自分が注目されていると意識した途端しどろもどろとなります。
 何をどう話していいのか、まったく分からないのです。
 しかも、あがり症でした。頬がかっと火照って、まるでふわふわと宙に浮かんでいるような気持ちになります。
 
 私が大勢の前で話さなければならなかった最初は、大学生の時、教育実習で教壇に立ったときでした。見事に失敗しました。
 自分でも何を言っているのか分からなかったのですから、生徒にとってはもっと分かりにくかったと思います。
 だが、その時は指導の教師がうまくカバーしてくれ、生徒も優秀でおとなしい生徒ばかりだったので、何とか格好をつけることができました。
 ところが、大学院に進学し、初めて私立の男子校の教壇に非常勤講師(アルバイト)として立ったとき、私は初めて自分の前に他者の存在を感じたのです。
 彼らは厳然として私の前に立ちはだかり、私には到底理解できない存在として立ち向かってきたのです。
 しかも、多勢に無勢です。
 その時、私は初めて話しというものをし始めました。つまり、相手が理解しようがしまいが関係なく、自分の中に生じた言葉を吐き出すのではなく、理解不可能な集団に対して、何とかコミュニケーションを取らざるを得ない事態が生じたのです。
 今思えば、その時私は変わったのです。
 話しは一人でするものではありません。
 「話し方」とは、対人間、対社会、いや、対世界との関係の中で初めて可能なのです。話し方を変えるというのは、人間に対する関係を変えることに他ならなかったのです。 

コメント(2)

さいたまの菊池 | 2011年5月21日 16:55

出口先生こんにちは。代ゼミで先生の授業を受けていて時に、男子校での御経験をお聞きしたことがあります。現在担任している学級もなかなか困難ですが、その子たちを集中させるための方策を検討中です。


出口 汪 | 2011年5月21日 19:52

現場の先生は、大変ですね。
これからも頑張ってください。



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